お花を扱う仕事をしていると、よく「エンジェルトランペットってチョウセンアサガオのことですよね?」と質問されることがあります。
確かに、どちらも大きなラッパ型の美しい花を咲かせる植物で、とてもよく似ているんです。でも実は、全く別の植物なんですよ!
この記事では、30年以上花屋で働いてきた経験をもとに、チョウセンアサガオとエンジェルトランペットの違いを、初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
見分け方のコツから毒性の注意点、育て方まで、お花好きなら知っておきたい基本情報をまとめてご紹介しますね♪
チョウセンアサガオとエンジェルトランペットの違い

チョウセンアサガオ
まず最初に、一番大事なポイントをお伝えしましょう!
チョウセンアサガオとエンジェルトランペットの最大の違いは「花の向き」です。
項目 | チョウセンアサガオ | エンジェルトランペット |
---|---|---|
花の向き | 上向き | 下向き |
植物の種類 | 一年草 | 低木・高木 |
学名 | ダチュラ属(Datura) | ブルグマンシア属(Brugmansia) |
高さ | 膝丈程度(50cm〜1m) | 2〜3m以上 |
花の大きさ | やや小さめ | 大型(20〜30cm) |
この表を見れば一目瞭然ですね!花が空に向かって咲いているのがチョウセンアサガオ、地面に向かって垂れ下がって咲いているのがエンジェルトランペットと覚えておけば、もう間違えることはありません。
なぜ混同されやすいの?呼び名の歴史

エンジェルトランペット
「どうしてこんなに混同されちゃうの?」と思いますよね。実は、植物の分類学の歴史に理由があるんです。
昔は、エンジェルトランペット(正式名:キダチチョウセンアサガオ)もチョウセンアサガオと同じ「ダチュラ属」に分類されていました。
ところが、研究が進むにつれて「これは別の仲間だ!」ということがわかり、現在ではエンジェルトランペットは「ブルグマンシア属」という独立したグループに分けられています。
でも、長い間同じ仲間として扱われていたため、今でも園芸店や花屋さんでは「ダチュラ」という名前で呼ばれることが多いんです。特に年配の園芸愛好家の方は、昔の呼び方に慣れ親しんでいることが多いですね。
こうした植物の正しい分類や特徴を詳しく知りたい方は、信頼できる園芸図鑑を手元に置いておくと安心ですよ。
チョウセンアサガオ(ダチュラ)の特徴

チョウセンアサガオ
基本情報
チョウセンアサガオは、正式には「ダチュラ属」に分類される植物です。
「朝鮮」という名前がついていますが、実は朝鮮半島原産ではありません!本当の原産地は南米やインド周辺なんです。江戸時代に薬草として日本に伝わった際に、この名前がついたと言われています。
学名の「Datura(ダチュラ)」は、ヒンズー語の「dhatura」が語源になっているそうです。
花の特徴
チョウセンアサガオの花は、空に向かって上向きに咲くのが最大の特徴です。
花の形は漏斗状(ろうと状)で、朝顔によく似たラッパ型をしています。花の大きさは直径10〜15cm程度で、色は白やうすい紫色が一般的です。
夜に開花して強い香りを放つため、夜香花(やこうばな)という別名もあります。暗くなってから花の美しさが際立つなんて、ちょっとミステリアスで素敵ですよね。
植物の形態
チョウセンアサガオは一年草なので、種から育てて一年で生育サイクルが完了します。
草丈は膝丈程度の50cm〜1m程度で、エンジェルトランペットと比べるとずっとコンパクトです。葉っぱは大きめで、やや厚みがあります。
花の後にできる実にはトゲトゲがびっしりついていて、まるで栗のイガのような見た目になります。この実も、エンジェルトランペットとの見分けポイントの一つになりますね。
エンジェルトランペット(ブルグマンシア)の特徴
基本情報
エンジェルトランペットの正式名称は「キダチチョウセンアサガオ」で、学名は「ブルグマンシア属(Brugmansia)」になります。
オランダの植物学者ブルグマンスさんの名前から命名されたんですよ。園芸の世界では「エンジェルストランペット」「エンジェルズトランペット」など、少しずつ異なる呼び方で親しまれています。
原産地はチョウセンアサガオと同じく南米のアンデス地方です。標高2000〜3000メートルの高地に自生していた植物なので、暑さには意外と弱い一面があります。
花の特徴
エンジェルトランペットの花は、下向きに垂れ下がって咲くのが最大の特徴です。
まさに天使のトランペットが地上に向かって音色を奏でているような、優雅で美しい姿をしています。花の大きさもチョウセンアサガオより大型で、長さが20〜30cmにもなる豪華な花を咲かせます。
花色は白、ピンク、黄色、オレンジなど バリエーションが豊富で、お庭に植えると存在感抜群です!夕方から夜にかけて強い香りを放つので、夜のお庭散歩が楽しくなりそうですね。
植物の形態
エンジェルトランペットは常緑低木または高木に分類される樹木です。
成長すると高さ2〜3メートル以上になり、大きく枝を広げてたくさんの花を下向きにぶら下げます。この姿がとても印象的で、一度見たら忘れられません!
葉っぱは楕円形で大きく、やや厚みがあります。実にはチョウセンアサガオのようなトゲトゲはなく、なめらかな表面をしているのも見分けポイントの一つです。
花屋が教える!簡単な見分け方のポイント
30年以上お花に携わってきた経験から、絶対に間違わない見分け方をお教えしましょう!
一番簡単な見分け方
「花の向きを見る」 これが一番確実で簡単な方法です。
- 上を向いて咲いている→チョウセンアサガオ(ダチュラ)
- 下を向いて咲いている→エンジェルトランペット(ブルグマンシア)
お花屋さんでも、お客様にはいつもこの方法をお伝えしています。覚えやすくて間違いないですからね♪
その他の見分けポイント
見分けポイント | チョウセンアサガオ | エンジェルトランペット |
---|---|---|
植物の高さ | 膝丈程度(1m以下) | 人の背丈以上(2m〜) |
幹の太さ | 細い茎 | 太い幹(木質化) |
葉の付き方 | 草のような付き方 | 木のような付き方 |
実の表面 | トゲトゲあり | なめらか |
慣れてくると、花が咲いていない時期でも植物全体の雰囲気で判断できるようになりますよ。
知っておきたい毒性について

チョウセンアサガオ
ここからは少し真面目なお話になりますが、とても大切なことなのでしっかりお伝えしますね。
両方とも有毒植物
チョウセンアサガオもエンジェルトランペットも、どちらも毒性の強い植物です。
含まれている成分は「スコポラミン」「ヒヨスチアミン」などのアルカロイド系毒素で、摂取すると幻覚や意識障害を引き起こす可能性があります。
江戸時代の名医、華岡青洲が世界初の全身麻酔手術に使ったのも、このチョウセンアサガオの麻酔作用を利用したものでした。それだけ強力な成分が含まれているということなんです。
取り扱いの注意点
普通に観賞用として育てる分には問題ありませんが、以下の点にご注意ください:
-
誤食に注意 小さなお子さんやペットがいるご家庭では、花や葉、実を口にしないよう気をつけましょう。
-
手入れ後は手洗い 剪定や植え替えをした後は、必ず石鹸でしっかり手を洗いましょう。
-
香りを嗅ぎすぎない 強い香りなので、長時間嗅ぎ続けるのは避けた方が安心です。
毒性のある植物について詳しく知りたい方は、信頼できる植物図鑑で正しい知識を身につけることをおすすめします。
正しい知識を持って楽しめば、とても美しくて魅力的な植物たちです。過度に怖がる必要はありませんが、基本的な注意事項は守って楽しみましょうね。
育て方の基本

エンジェルトランペット
せっかく違いがわかったので、実際に育ててみたくなった方もいらっしゃるのではないでしょうか?
どちらも美しい花を咲かせてくれる魅力的な植物です。基本的な育て方のポイントをご紹介しますね♪
チョウセンアサガオの育て方
一年草なので、毎年種から育てるのが基本です。
栽培のポイント
種まき時期 春の4〜5月頃が適期です。気温が安定してから蒔くのがコツですよ。
置き場所 日当たりの良い場所を好みます。ただし、真夏の強い日差しは少し苦手なので、午後の西日が避けられる場所がベストです。
水やり 土の表面が乾いたらたっぷりと水を与えます。夏場は朝と夕方の2回水やりが必要になることもあります。
注意点 繁殖力が強いので、こぼれ種で翌年も芽が出ることがある植物です。管理には十分注意しましょう。
エンジェルトランペットの育て方
木本植物なので、一度植えれば長く楽しめるのが魅力です。
栽培のポイント
植え付け時期 春の4〜5月、または秋の9〜10月が適期です。真夏と真冬は避けましょう。
置き場所 日当たりと風通しの良い場所を好みます。ただし、原産地が高地なので暑さには注意が必要です。
水やり 土の表面が乾いたらたっぷりと与えます。特に夏場の水切れは厳禁!葉がしおれてしまいます。
剪定 花が終わったら軽く剪定してあげると、次の花が咲きやすくなります。
冬越しについて
寒さにはやや弱い植物です。
- 暖地:戸外で冬越し可能(霜よけ程度でOK)
- 寒冷地:鉢植えにして室内に取り込むか、地上部が枯れても根が生きていれば春に芽吹きます
育て方の共通注意点
どちらの植物も育てる際に気をつけたいのは、毒性があることです。
- 剪定や植え替えの際は手袋を着用
- 作業後は必ず石鹸で手洗い
- 小さなお子さんやペットがいる場合は設置場所を慎重に選ぶ
これらの点さえ気をつければ、どちらも比較的育てやすい植物です。初心者の方でも十分に楽しめますよ!
よくある質問

エンジェルトランペット
Q. 切り花として楽しめますか?
A. どちらも切り花として楽しめますが、毒性があるため取り扱いには注意が必要です。切り花にする際は必ず手袋を着用し、小さなお子さんの手の届かない場所に飾りましょう。
Q. 香りはどのくらい強いですか?
A. どちらも夜になると強い香りを放ちます。人によっては香りが強すぎると感じることもあるので、寝室や狭い室内よりも、お庭やベランダで楽しむのがおすすめです。
Q. 初心者にはどちらがおすすめですか?
A. チョウセンアサガオの方が管理しやすいかもしれません。一年草なので失敗しても翌年リセットできますし、コンパクトなので場所も取りません。
まとめ
チョウセンアサガオとエンジェルトランペットの違いについて詳しくご紹介してきました。
最重要ポイントをもう一度おさらいすると:
- 花の向きが最大の違い(上向き vs 下向き)
- 植物の種類が違う(一年草 vs 木本)
- どちらも毒性があるので取り扱い注意
- 正しい知識があれば安全に楽しめる
長年お花に携わってきて感じるのは、植物の正しい知識を持つことの大切さです。見た目が似ている植物でも、実は全く違う性質を持っていることがよくあります。
でも、だからこそ植物の世界は奥が深くて面白いんですよね!
今回の記事で、チョウセンアサガオとエンジェルトランペットの違いがしっかりと理解できたのではないでしょうか。どちらも適切な知識と注意を持って育てれば、とても美しい花を楽しませてくれる素晴らしい植物です。
安全第一で、お花のある暮らしを楽しんでくださいね♪
もしお庭やベランダで実際に育ててみたくなったら、まずは信頼できる園芸店で相談してみることをおすすめします。きっと素敵なガーデニングライフが始まりますよ!