ナンキンハゼは、初夏には可憐な花を咲かせ、秋には美しい三段紅葉と真っ白な実で私たちの目を楽しませてくれる魅力的な庭木です。
中国原産でありながら日本の気候に良く適応し、比較的育てやすいことから街路樹や公園樹、個人庭園のシンボルツリーとして広く親しまれています。特に秋の紅葉は、緑から黄色、そして鮮やかな赤色へと段階的に変化する「三段紅葉」と呼ばれる美しい現象で有名です。
ただし、ナンキンハゼは外来種として繁殖力が強い特徴があり、一部地域では注意喚起されている場合もありますので、植栽前に地域の情報を確認されることをおすすめします。
この記事では、ナンキンハゼの基本的な特徴から育て方、見頃時期、花言葉まで、ナンキンハゼの魅力を余すところなくご紹介いたします。
ナンキンハゼとは?基本情報と特徴

ナンキンハゼ(南京櫨、学名:Triadica sebifera)は、トウダイグサ科の落葉高木で、中国原産の美しい庭木です。日本には江戸時代に渡来し、現在では本州から九州にかけて広く栽培されています。
ナンキンハゼの基本データ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 学名 | Triadica sebifera |
| 科名 | トウダイグサ科 |
| 原産地 | 中国 |
| 樹高 | 10~15m(剪定で調整可能) |
| 花期 | 5月~7月頃(地域により前後) |
| 実の時期 | 10月~1月頃 |
| 紅葉時期 | 11月~12月頃(気候により変動) |
ハゼノキとの違い
ナンキンハゼはしばしばハゼノキと混同されますが、実は全く異なる植物です。
ハゼノキ(ウルシ科)は触れるとかぶれることがありますが、ナンキンハゼ(トウダイグサ科)にはそのような心配はありません。また、葉の形も異なり、ナンキンハゼはハート形に近い丸い葉を持つのが特徴です。
原産地と日本での普及
中国では古くから蝋燭の原料として栽培されており、種子から採取される油脂が重要な資源でした。日本でも同様の目的で導入されましたが、その強い適応性と繁殖力により、現在では観賞用として親しまれる一方で、一部地域では外来種としての管理が課題となっています。
ナンキンハゼの魅力:四季を通じた美しさ
ナンキンハゼの最大の魅力は、四季を通じて異なる美しさを楽しめることです。一本の木で一年中変化に富んだ景色を提供してくれる、まさに庭づくりの王道とも言える存在です。
春から初夏:可憐な黄緑色の花

5月から7月頃にかけて、ナンキンハゼは黄緑色の小さな花を房状に咲かせます。開花時期は地域や年によって幅があり、暖かい地域では5月頃から、涼しい地域では7月頃まで楽しめることもあります。
花は雌雄異花で、雄花は黄色い穂状、雌花は緑色で目立ちませんが、新緑の季節に相応しい爽やかな印象を与えてくれます。この時期の花は華やかさこそないものの、初夏の息吹を感じさせる繊細な美しさがあります。
夏:涼しげな緑陰
夏場のナンキンハゼは、ハート形の美しい葉で豊かな緑陰を作り出します。葉は光沢があり、風に揺れる様子は涼しげで、暑い夏の日差しを和らげてくれる頼もしい存在です。
秋:圧巻の三段紅葉

ナンキンハゼの最大の見どころは、何と言っても秋の三段紅葉です。
11月頃から葉の色が段階的に変化していき、同じ木の中でも緑・黄・赤の三色が同時に楽しめる贅沢な光景を見せてくれます。ただし、紅葉の時期は気候条件によって前後するため、暖かい年は12月まで楽しめることもあります。
この美しい変化は「三段紅葉」と呼ばれ、ナンキンハゼならではの特別な魅力として多くの人々を魅了しています。紅葉の進行は気温や日照条件によって変わりますが、一般的に木の上部から徐々に色づき始め、最終的には燃えるような鮮やかな赤色に変化します。
冬:美しい白い実と樹形

紅葉が終わった後も、ナンキンハゼの楽しみは続きます。白い実が枝にたくさん残り、雪化粧をしたような美しい景観を作り出します。
この白い実は鳥たちの大切な食料源にもなり、冬の庭に生命感を与えてくれます。実が枝に残る期間も地域の気候によって変動し、暖かい地域では1月まで楽しめることもあります。また、葉が落ちた後の樹形の美しさも見どころの一つで、太い幹と広がりのある枝振りが庭に風格を与えてくれます。
【参考記事】秋の実もの植物についてもっと知りたい方はこちら↓

ナンキンハゼの育て方完全ガイド
ナンキンハゼは比較的育てやすい庭木として知られていますが、美しく育てるためのポイントがいくつかあります。ここでは初心者の方でも失敗しない育て方をご紹介します。
植え付けの時期と場所選び
植え付け時期
ナンキンハゼの植え付けに最適な時期は11月~3月の落葉期です。この時期に植え付けることで、根がしっかりと張る前に新芽が出るため、定着率が高まります。
場所選びのポイント
ナンキンハゼは日当たりの良い場所を好みます。以下の条件を満たす場所を選びましょう:
- 日照時間が6時間以上確保できる場所
- 水はけが良い土壌
- 風通しが良い環境
- 将来的な成長スペースを考慮した広さ
- 近隣への配慮(落葉や実の処理について)
土壌と水やりの管理
土壌の準備
ナンキンハゼは土壌の適応性が高い植物ですが、以下のような土壌が理想的です:
| 土壌の条件 | 詳細 |
|---|---|
| pH値 | 弱酸性~中性(6.0~7.0) |
| 水はけ | 良好(水たまりができない程度) |
| 保水性 | 適度な保水力がある |
| 栄養 | 腐葉土を混ぜた栄養豊富な土 |
植え付け時には、掘り上げた土に腐葉土を3分の1程度混ぜ込むことで、より良い生育環境を作れます。
水やりの方法
- 植え付け直後:根付くまでの約1ヶ月間は、土の表面が乾いたらたっぷりと水を与える
- 定植後:基本的には自然の雨量で十分。夏の乾燥期には週に1~2回程度
- 鉢植えの場合:土の表面が乾いたら鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと
肥料の与え方
ナンキンハゼはそれほど肥料を必要としない植物ですが、美しい紅葉と健康な成長のために適切な施肥を行いましょう。
施肥のタイミング
- 2月~3月:寒肥として有機肥料を株元に施す
- 6月~7月:成長期の追肥として化成肥料を軽く施す
おすすめの肥料
| 時期 | 肥料の種類 | 施用量の目安 |
|---|---|---|
| 2-3月 | 有機肥料(油かす、骨粉など) | 株元に一握り程度 |
| 6-7月 | 化成肥料(8-8-8など) | 株元に軽くひとつまみ |
剪定の方法とタイミング
剪定時期
ナンキンハゼの剪定は12月~2月の落葉期に行います。ただし、地域の気候によって適期が前後する場合があるため、完全に落葉してから行うことが重要です。
剪定のポイント
- 込み合った枝を間引く
- 徒長枝や内向きの枝を切除
- 樹形を整える程度の軽い剪定
- 太い枝を切る場合は切り口に癒合剤を塗布
ナンキンハゼは自然の樹形が美しい木なので、強剪定は避け、自然な姿を活かした軽い剪定を心がけましょう。
見頃時期とお楽しみカレンダー
ナンキンハゼを最大限に楽しむために、年間を通じた見頃時期を把握しておきましょう。ただし、以下の時期は地域の気候や年によって前後することがありますので、あくまで目安としてお考えください。
花の見頃(5月〜7月)
5月から7月にかけて、黄緑色の花が見頃を迎えます。開花時期は地域差があり、暖かい地域では5月中旬頃から、涼しい地域では7月頃まで楽しめることがあります。
この時期のナンキンハゼは新緑と花のコントラストが美しく、初夏らしい爽やかな印象を与えてくれます。花自体は目立ちませんが、新芽の美しさと相まって季節感を演出してくれる大切な時期です。
紅葉の見頃(11月〜12月)
ナンキンハゼの最大の見どころである三段紅葉は、一般的に11月中旬から12月上旬が見頃です。ただし、気温や日照条件によって時期が変動するため、暖かい年は12月下旬まで楽しめることもあります。
一般的に以下のような順序で色づいていきます:
| 時期 | 葉の色の変化 | 備考 |
|---|---|---|
| 11月上旬 | 緑色の葉が部分的に黄色に | 気候により前後 |
| 11月中旬 | 黄色が増え、一部が橙色に | 三段紅葉開始 |
| 11月下旬 | 橙色から赤色への変化開始 | 見頃ピーク |
| 12月上旬 | 鮮やかな赤色でピーク | 地域により延長 |
この時期は朝晩の気温差が紅葉の美しさに大きく影響するため、天候をチェックしながら最適な観賞タイミングを見極めましょう。
白い実の見頃(11月〜1月)
白い実の美しさは11月から1月にかけて楽しめますが、気候条件により期間が変動します。
紅葉と同時期に実が白く色づき始め、葉が落ちた後も長期間枝に残るため、冬の庭に雪化粧のような美しさをもたらしてくれます。この白い実は野鳥の貴重な食料源でもあり、庭に訪れる鳥たちの観察も楽しめます。
ナンキンハゼの花言葉と由来
ナンキンハゼには美しい花言葉が込められており、その由来を知ることでより一層この木への愛着が深まることでしょう。
花言葉に込められた意味
ナンキンハゼの主な花言葉は以下の通りです:
- 「心が燃える」
- 「真心」
- 「純真」
「心が燃える」という花言葉は、秋の燃えるような美しい紅葉から生まれました。鮮やかな赤色に染まる葉の様子が、まさに情熱的な心の状態を表現していると考えられています。
「真心」と「純真」は、初夏の可憐な花と冬の純白な実から連想された花言葉です。飾らない自然な美しさが、素直で純粋な心を象徴しているとされています。
名前の由来と歴史
ナンキンハゼの名前には興味深い由来があります。
「ナンキン(南京)」は中国の古都南京を指し、原産地である中国から来たことを表しています。
「ハゼ」は、種子から採取される蝋が、日本古来のハゼノキと同様に蝋燭の原料として使われたことに由来します。
江戸時代に日本に渡来した当初は、主に実用的な目的で栽培されていましたが、その美しい四季の変化が評価され、現在では観賞用として広く親しまれるようになりました。
育てる際の注意点とよくあるトラブル

ナンキンハゼは比較的育てやすい木ですが、健康に育てるために知っておきたい注意点がいくつかあります。
外来種としての注意事項
ナンキンハゼは中国原産の外来種であり、繁殖力が非常に強い特徴があります。そのため、以下の点にご注意ください:
- 一部地域では要注意外来生物として管理されている場合があります
- 種子の飛散により周辺に拡がる可能性があります
- 地域の生態系への影響が懸念される場合があります
- 植栽前に自治体の情報を確認することをおすすめします
植栽を検討される際は、地域の環境や近隣への配慮を十分に検討し、適切な管理を心がけましょう。
病害虫対策
主な病気
ナンキンハゼは病気に強い木ですが、以下の病気に注意が必要です:
- うどんこ病:葉に白い粉のような症状が現れる
- すす病:葉に黒いすすのような汚れが付着
これらの病気は風通しの悪さや湿度の高さが原因となることが多いため、適切な剪定で風通しを良くすることが予防につながります。
害虫対策
| 害虫名 | 被害の症状 | 対策方法 |
|---|---|---|
| アブラムシ | 新芽や若葉に群生、葉の変形 | 早期発見・薬剤散布 |
| カイガラムシ | 枝や幹に白い塊状で付着 | ブラシでこすり落とす |
| ハマキムシ | 葉を巻いて食害 | 発見次第除去 |
害虫対策の基本は定期的な観察です。異常を早期に発見し、適切な対処を行うことで被害を最小限に抑えられます。
落葉や実の処理
落葉の管理
ナンキンハゼは秋に大量の葉を落とします。美しい紅葉を楽しんだ後は:
- 定期的な清掃を行い、近隣への配慮を忘れずに
- 落ち葉は堆肥として再利用することも可能
- 風で飛ばされる前に回収することが重要
実の処理
白い実も最終的には落下します:
- 実には油分が含まれているため、滑りやすくなる場合があります
- 定期的な清掃で安全性を確保
- 種子の飛散を防ぐため、実が熟す前の回収も検討
- 実は鳥の食料にもなりますが、拡散防止とのバランスを考慮
よくある質問Q&A
Q1:ナンキンハゼの成長速度はどのくらいですか?
A:ナンキンハゼは中程度から速い成長速度を持つ木です。適切な環境下では年間50cm~1m程度成長し、植え付けから5~10年で見応えのある樹形になります。この成長の早さも、管理が必要とされる理由の一つです。
Q2:狭い庭でも育てられますか?
A:剪定によりサイズをコントロールできるため、狭い庭でも栽培可能です。ただし、自然な樹形の美しさを活かすためには、ある程度のスペースがあることが理想的です。また、近隣への配慮も重要な要素となります。
Q3:毒性はありますか?
A:ナンキンハゼ自体に強い毒性はありませんが、トウダイグサ科の植物として樹液に軽い刺激性があります。剪定作業時は手袋を着用し、肌への接触を避けることをおすすめします。
Q4:鉢植えでも育てられますか?
A:若木であれば鉢植えでも育てられますが、本来は高木のため、長期的には地植えが適しています。鉢植えの場合は定期的な植え替えと剪定が必要で、種子の管理も重要になります。
Q5:紅葉が美しくならない原因は?
A:紅葉の美しさには以下の要因が影響します:
- 日照時間の不足
- 気温差の少ない気候
- 肥料の与えすぎ(特に窒素過多)
- 水分の過不足
Q6:植栽前に確認すべきことはありますか?
A:ナンキンハゼは外来種のため、以下の確認をおすすめします:
- 自治体の外来種に関する方針
- 近隣住民への配慮(落葉や実の処理について)
- 適切な管理体制の確保
- 将来的な大きさを考慮した植栽場所
【参考記事】庭に植える際の注意点について詳しく知りたい方はこちら↓
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まとめ
ナンキンハゼは四季を通じて楽しめる魅力的な庭木です。初夏の可憐な花から始まり、夏の緑陰、秋の三段紅葉、冬の白い実まで、一年中異なる表情を見せてくれます。
特に秋の紅葉の美しさは格別で、緑・黄・赤の三色が同時に楽しめる三段紅葉は、ナンキンハゼならではの特別な魅力です。また、紅葉後に残る白い実も冬の庭に美しいアクセントを与えてくれます。
育て方も比較的簡単で、日当たりの良い場所に植え、適度な水やりと軽い剪定を行うだけで美しく育てることができます。病害虫にも強く、初心者の方にもおすすめできる庭木です。
ただし、ナンキンハゼは外来種として繁殖力が強い特徴があるため、植栽前には地域の情報を確認し、適切な管理を心がけることが大切です。近隣への配慮と環境への責任を持って育てることで、長く美しい庭を楽しむことができます。
「心が燃える」「真心」「純真」という美しい花言葉を持つナンキンハゼは、適切な管理のもとであなたの庭に豊かな季節感と自然の美しさをもたらしてくれることでしょう。
植栽を検討される際は、まず地域の情報を確認し、責任を持って管理できる環境を整えてから、四季折々の美しい変化をお楽しみください。



